
最近、ふと思うことがあります。
僕、いつからこんなに“興奮しなくなったんだろう”。
小学生の頃は、ほんの些細なことで心が震えていたはずです。
夏休みの前日、遠足の前の夜、友達と作った秘密基地、ゲームの新作を買った瞬間。
あの頃の僕は、まるで全身がアンテナになっているみたいに、世界のすべてが新鮮で、面白くて、待ちきれないものでした。
でも今はどうでしょう。
どんなに美味しいものを食べても、どんなに面白い動画を見ても、「楽しい」は感じても、“興奮”まではいかない。
感情がどこか鈍っているような、熱が届かないような感覚。
今回は、その理由を「ドーパミン中毒」という視点から考えてみたいと思います。
- 興奮を生み出すのは、ドーパミンという脳内物質
- なぜ今は興奮できないのか?
- ドーパミン麻痺が生む、静かな無感情
- 脳の仕組みから見える「興奮が減る」メカニズム
- 小学生の頃の興奮が強かった理由
- 興奮を取り戻す3つのリハビリ
- 興奮とは、生きている実感そのもの
- まとめ
興奮を生み出すのは、ドーパミンという脳内物質
まず前提として、僕たちが「ワクワクする」「楽しい」と感じるとき、脳ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されています。
ドーパミンは「快楽物質」と呼ばれることもありますが、正確には「快楽を求める意欲」を作り出す物質です。
つまり、ドーパミンが出るから“楽しい”のではなく、「もっとやりたい!」「早く手に入れたい!」という期待と欲求の高まりを生むのです。
小学生の頃、僕が遠足前に眠れなかったのも、このドーパミンが暴れていたからです。
「明日はどんな一日になるんだろう」と想像するたびに、報酬予測システムが刺激され、脳が“まだ手に入っていない快”を追い求めていたのです。
なぜ今は興奮できないのか?
僕が感じる“興奮の減少”は、脳のドーパミン分泌が少なくなったからではなく、受け取る側(受容体)が麻痺しているからかもしれません。
たとえば、ショート動画やSNS。
1分も経たずに次々と強い刺激が押し寄せてくる。
美味しそうな食事、可愛い動物、刺激的な話題、面白いネタ。
脳は「小さな報酬」を高速で受け取り続け、ドーパミンが過剰分泌される状態になります。
これを毎日何時間も続けると、脳は「もうこの程度の刺激では興奮しない」と判断し、
ドーパミン受容体の感度を下げてしまうのです。
結果、日常の小さな出来事ではドーパミンが出ても反応せず、「嬉しい」「楽しい」「ワクワクする」という感情が湧きにくくなる。
言い換えると、ドーパミンの“燃費”が悪くなってしまった状態になっているのです。
ドーパミン麻痺が生む、静かな無感情
この状態を僕は「ドーパミン麻痺」と呼んでいます。
感情が動かない、何をしても心が平坦。
楽しいはずなのに、心の中では波が立たない。
昔の僕なら、お気に入りのマンガの発売日を指折り数えて待っていたのに、今では「まあそのうち読むか」と思うだけ。
新しい服を買っても、旅行に行っても、“楽しい”よりも“予定をこなす”に近い感覚になることさえあります。
それはきっと、「楽しみを感じる能力」そのものが鈍ってしまっているからです。
脳の仕組みから見える「興奮が減る」メカニズム
脳科学的に見ると、興奮が減る理由には明確な構造があります。
-
過剰刺激による感度低下(報酬系の疲弊)
ドーパミンが過剰に出続けると、受容体がダウンレギュレーションを起こし、反応が鈍くなる。 -
報酬予測の飽和(刺激への慣れ)
短期的報酬が多い環境では、「次の刺激はどうせこれくらい」と脳が予測し、期待が生まれにくくなる。 -
能動性の低下(受動的な報酬獲得)
受け身で得られる快楽(視聴、クリックなど)が中心になると、「自ら動く」意欲回路が使われず、劣化していく。
この三つが合わさると、「感情のエンジンが空回りする」ような状態になります。
小学生の頃の興奮が強かった理由
では、逆にあの頃の“興奮”が強かった理由は何だったのでしょうか。
僕が思うに、それは次の3つの要素が揃っていたからです。
-
未知との出会いが多かった
経験が少ない分、あらゆる出来事が“新しい”と感じられた。
脳が「予測できない快」を感じ、ドーパミンが強く分泌されていた。 -
五感での体験が中心だった
画面越しではなく、実際に触れて、動いて、遊んで、笑っていた。
身体的興奮と感情的興奮が連動していた。 -
能動的な“遊び”が多かった
何かを“自分で作る”経験が多く、ドーパミンが「努力→達成」のプロセスで自然に分泌されていた。
大人になるにつれて、「未知」は減り、「五感の体験」はデジタルに置き換わり、「遊び」は効率や成果に置き換わっていった。
これが、興奮の減少を決定づけたのだと思います。
興奮を取り戻す3つのリハビリ
ではどうすれば失われた“興奮”を取り戻せるのか。
僕が実際に試して、効果を感じた方法を紹介します。
1. デジタル断食をする
ショート動画やSNSを一時的に断つ。
最初の数日は退屈で仕方ないけれど、その「退屈」に耐えられるようになった頃、日常の中の小さな刺激で「おっ」と感じられるようになる。
これは、脳が自然な報酬感度を取り戻し始めているサインです。
2. 五感で味わう体験を増やす
散歩でも料理でも、自然でも人でもいい。
「手を動かす」「音を聴く」「香りを感じる」「風に触れる」など、デジタルでは再現できない感覚を意識的に味わう。
五感を使うことで、報酬系がバランスよく再起動します。
3. “受け取る”から“作る”へ
見る・消費する行為ばかりだと、脳は受け身になります。
でも「作る」「表現する」行為は、ドーパミンを能動的に出す行為です。
文章を書く、絵を描く、音楽を作る、動画を撮る。
成果ではなく「作る過程」を楽しむことが大切です。
興奮とは、生きている実感そのもの
興奮を感じるということは、脳が「今を生きている」と認識している状態です。
逆に、興奮がなくなると、人生は“なぞるだけの映像”のように平坦になっていく。
けれど、僕たちの脳は可塑性を持っています。
どれだけ麻痺していても、少しずつ自然な刺激を与えていけば、またちゃんと“ワクワクできる脳”に戻る。
だから、焦らず、もう一度「小さな興奮」に目を向けてみようと思います。
あの頃のように、しょうもないことで笑って、感情を動かしてみる。
その一歩が、麻痺したドーパミン回路を呼び覚まし、「生きている」感覚を取り戻すことにつながるはずです。
まとめ
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大人になると興奮しなくなるのは「ドーパミン中毒」による感度低下が一因。
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興奮は、未知×五感×能動性の組み合わせで自然に生まれる。
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デジタル断食・五感体験・創作行動で感情は再び動き出す。
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