
僕は長い間、人間関係や生きづらさについて考えてきました。
その中で強く実感しているのは、「孤独な人とは、世界に味方がいないと感じている人」だということです。
一見すると単純な表現に思えるかもしれませんが、この感覚には深い心理的背景があります。
特にアダルトチルドレンや愛着障害と呼ばれる人たちは、まさにこの「味方の不在」に苦しんでいるのです。
本来、子どもは家庭という最初の社会の中で「愛される安心感」を経験します。
親に抱きしめられたり、泣いたときにあやしてもらったり、ご飯を用意してもらう中で「僕は守られている」「僕には味方がいる」という感覚を内面化していきます。
これが後に心の中に「内的社会」として残り、大人になっても自分を支える基盤になりるのです。
しかし、その愛情や安心を十分に得られずに育った場合、人は「心の中に味方のいないまま大人になる」ことになります。
それが「世界に味方がいない」という孤独感の正体なのです。
孤独の正体は「内的社会の不在」
心理学では、人が他者との関係を通じて「心の中に安心を取り込むプロセス」があると言われています。
僕はこれを「内的社会」と呼んでいます。
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本来なら家庭で得るはずの安心
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無条件に愛される感覚
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受け入れられる経験
これらを繰り返すことで、人は「心の中に味方を作る」ことができるのです。
ところが、アダルトチルドレンや愛着障害を抱える人は、家庭でその基盤が育ちません。
「泣いても抱きしめてもらえない」「頑張っても認めてもらえない」「存在自体を迷惑のように扱われる」
そうした経験は、内的社会の形成を阻害します。
するとどうなるか。
外の世界に出たときに、安心を心の中で再生産できないのです。
困ったときや孤独を感じたとき、本来なら「大丈夫、僕には味方がいる」と自分を支えることができるはずなのに、それができない。
だからこそ「世界に味方がいない」という強烈な孤独に陥ります。
味方のいない感覚とは
例えばこんなケースを考えてみてください。
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友達にLINEを送ったけれど、すぐに返事がこない。
→ 普通なら「忙しいのかな」と受け流せるはずなのに、「嫌われたのかもしれない」と強烈に不安になる。 -
職場で上司に注意された。
→ 一時的な指摘のはずなのに、「僕は誰からも必要とされていない」と思い込んでしまう。 -
恋人が少し冷たい態度を取った。
→ 「その時だけの気分だろう」と捉えられず、「もう見捨てられる」と感じてしまう。
これらの反応はすべて、「心の中に味方がいない」ことから生まれます。
内的社会を持っている人は、「誰かが僕を支えてくれている」という土台があるため、一時的な不安を乗り越えやすいのです。
しかしそれがない人は、ちょっとした出来事でも「世界に見放された」と感じてしまいます。
孤独と欠乏感の関係
僕が研究している「欠乏学」では、孤独感を「欠乏感の作動」として捉えます。
欠乏感とは、生命維持のために「足りないものを探す機能」のことです。
食べ物が足りなければ空腹を感じ、安全が脅かされれば不安を感じるように、愛情が足りなければ「孤独」という感情を生み出します。
内的社会が育っていない人は、常に「愛情が足りない」と感じやすい。
そのため、安心の欠乏が慢性的に作動し、孤独感にさいなまれるのです。
つまり孤独とは、「味方のいない世界」というよりも、正確には「味方を内面化できなかった結果、世界全体を敵のように感じてしまうこと」だと言えるでしょう。
世界は本当に敵なのか?
ここで大切なのは、「世界そのものが敵ではない」ということです。
問題は「世界にどう見えているか」という認知の仕組みです。
例えば、同じように失敗しても、ある人は「誰も僕を支えてくれない」と感じ、別の人は「一時的にうまくいかなかったけど、またやり直せばいい」と考えられます。
違いは「心の中に味方がいるかどうか」です。
僕がカウンセリングで出会う人の中にも、こうしたケースは多いです。
親からの愛情を十分に受けられなかった人は、職場や恋愛など外の人間関係にも過敏になり、「どうせ誰も味方じゃない」と思い込みやすくなります。
しかし実際には、外の世界には支えてくれる人も、共感してくれる人もいる。
その存在を「信じられない」状態こそが、孤独の本質なのです。
内的社会を再構築する方法
では「内的社会の不在」はどうすれば埋められるのでしょうか。
僕は「自己再養育(re-parenting)」という考え方が大切だと思っています。
1. セルフコンパッションを育てる
「失敗してもいい」「僕は僕で価値がある」と自分に声をかけること。
最初は違和感があっても、少しずつ自分の中に「優しい親の役割」を築いていきます。
2. 安全な人間関係を選ぶ
自分を否定してくる関係ではなく、安心を与えてくれる関係を意識的に選ぶこと。
外的社会の中に小さな「味方」を見つけ、その経験を積み重ねることが重要です。
3. 内的対話を習慣にする
心の中で「大丈夫だよ」「僕はひとりじゃない」と自分に語りかける練習をすること。
これによって、心の中に「味方の声」を増やしていくことができます。
こうしたプロセスを繰り返すことで、少しずつ「内的社会」を再構築していけるのです。
孤独を生き抜く力
孤独を感じるとき、人は「誰も僕を理解してくれない」「世界に味方がいない」と思い込んでしまいます。
でも本当は、「心の中の味方」が欠けているだけなのです。
家庭で得られなかった愛や安心は、大人になってからでも育て直すことができます。
内的社会を再構築すれば、外の世界のすべてが敵に見える状態から抜け出すことができるのです。
僕自身も、過去には孤独に苦しんだ経験があります。
でも今振り返ると、それは世界に味方がいなかったのではなく、「自分の中に味方を持てなかった」からでした。
孤独な人とは、世界に味方がいない人。
しかしその味方は、外に探すだけではなく、内に育てることもできるのです。
まとめ
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孤独な人とは「世界に味方がいない」と感じる人である
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その背景には「内的社会の不在」がある
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内的社会は本来、家庭での愛情体験から形成される
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それがないと、大人になってからも世界を敵視しやすくなる
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しかし自己再養育やセルフコンパッションを通じて再構築することが可能
孤独の正体を理解すれば、世界の見え方は変わります。
そして「世界に味方がいない」という思い込みから抜け出すことは、誰にでもできることなのです。
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