
「見捨てられ不安」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
特に恋愛や人間関係の中で、自分が相手にとって大切ではなくなること、見放されてしまうことに強い恐怖を感じる心理状態を指します。
僕自身も、この感覚に悩まされたことがありました。
相手の反応や態度が少し変わるだけで「嫌われたのではないか」「もう必要とされていないのではないか」と不安に飲み込まれてしまうのです。
この不安は一見すると「相手を大事に思っているからこそ」生まれるように見えます。
しかし欠乏学の視点から見ると、その根本には「プラスのストロークへの依存」があると考えられます。
この記事では、見捨てられ不安とプラスのストロークの関係を整理しながら、その付き合い方について具体的に解説していきます。
見捨てられ不安とは何か
見捨てられ不安とは、心理学的に「自分が大切にしている人に見放されるのではないか」という強い恐れを意味します。
特に親密な関係において現れやすく、恋人・家族・親友など、自分にとって重要な存在が離れてしまうことを強く意識してしまいます。
典型的な例を挙げると:
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恋人の返信が少し遅れるだけで「嫌われたのでは」と思ってしまう
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パートナーが疲れていて優しくできないときに「もう愛されていない」と感じる
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友達の予定が合わないだけで「自分は必要とされていない」と考えてしまう
こうした不安は頭で考えるよりもずっと大きな感情の波を引き起こします。
理性では「大したことではない」と理解できても、心がそれを受け入れられないのです。
プラスのストロークに依存する構造
では、なぜ見捨てられ不安はこんなにも強烈なのでしょうか。
僕がたどり着いた結論は「プラスのストロークへの依存」です。
ストロークとは交流分析で使われる言葉で、人との関わりから得られる刺激や承認のことを指します。
笑顔を向けてもらう、優しい言葉をかけてもらう、褒めてもらう。
これらはすべてプラスのストロークです。
逆に、無視される、怒鳴られる、批判されるなどはマイナスのストロークになります。
見捨てられ不安を抱える人は、このプラスのストロークに過剰に依存している傾向があるのです。
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相手の優しい言葉が「自分の存在価値の証明」になっている
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相手の態度が「自分はここにいていい」という安心の根拠になっている
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相手の一貫した行動が「自分は愛されている」という保証になっている
つまり、自己の価値や安心感を相手からのプラスのストロークに委ねてしまっているのです。
一貫性が崩れると強い不安に飲まれる
ここで大きな問題が起こります。
プラスのストロークは常に安定して与えられるものではありません。
例えば恋人が忙しければ、メッセージの頻度が減ることはあります。
仕事で疲れていれば笑顔が減ることもあります。
些細な事情で冷たく見える瞬間もあるでしょう。
しかし、見捨てられ不安を抱えている人にとっては、この「一貫性の崩れ」が大問題になります。
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「前は優しかったのに、今日は冷たい」
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「昨日はすぐ返信があったのに、今日は遅い」
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「いつもは笑顔なのに、今日は無表情だった」
こうした些細な変化が、まるで愛情そのものが失われたかのように感じられてしまいます。
そして一気に「見捨てられるのではないか」という強烈な不安に飲み込まれてしまうのです。
欠乏学的に言えば、これは「安心の供給源を外部に置いているために起こる揺らぎ」です。
自分の中に安定した自己承認がなければ、外の状況の変化に翻弄されてしまうのは自然なことなのです。
見捨てられ不安と向き合うための考え方
では、どうすればこの見捨てられ不安と付き合っていけるのでしょうか。
僕は大きく分けて三つのポイントがあると考えています。
自分の中に安心の供給源を作る
まず大事なのは「安心の主導権を自分に戻す」ことです。
相手の言葉や態度が安心の唯一の源泉になっていると、その一貫性が崩れた瞬間に不安でいっぱいになってしまいます。
なので、小さなことでも「自分で自分を認める」習慣を持つことが有効です。
例えば、今日やり遂げたことをノートに書き出す。
自分の努力を声に出して褒める。
これだけでも「自己ストローク」を育てることにつながります。
相手の行動と自分の価値を切り離す
次に必要なのは、相手の行動と自分の価値を混同しないことです。
相手が冷たく感じる態度をとったとき、それは必ずしも「自分の価値が下がった」ことを意味しません。
相手が疲れているだけかもしれないし、ただ余裕がないだけかもしれない。
「相手の事情」と「自分の存在価値」を切り離して考える練習をすると、不安が和らぎます。
見捨てられ不安そのものを受容する
最後に大切なのは、「不安をなくそう」とするのではなく「不安と共に生きる」視点です。
見捨てられ不安は、自分が人を大事に思っている証でもあります。
欠乏感から来るものとはいえ、その背景には「愛されたい」「つながっていたい」という大切な気持ちがあるのです。
だから「こんな不安を持ってはいけない」と否定するのではなく、「不安を感じる自分も存在していい」と受け入れてあげることが回復の第一歩になります。
実践できるワーク
ここで、日常の中で試せる具体的なワークをいくつか紹介します。
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自己承認日記を書く
その日にできたことを3つ書き出し、自分を褒める。 -
不安を言語化する
見捨てられ不安が出たら「僕は今、〇〇がなくなりそうで不安だ」と紙に書く。言語化することで不安を客観視できる。 -
不安を共有する
信頼できる相手には「僕はこういうとき不安になりやすい」と素直に伝える。相手との関係性が深まるきっかけにもなる。
見捨てられ不安は悪者ではない
最後に強調したいのは、見捨てられ不安そのものを「悪者」にしないことです。
確かに生きづらさを生む感情ですが、それは裏を返せば「人を大切にする心」や「つながりを求める気持ち」の表れでもあります。
大事なのは、その不安をどう扱うかです。
外部のプラスのストロークに依存しすぎず、自分の中にも安心の供給源を育てること。
相手との関係に一喜一憂しすぎず、自分自身との関係を深めていくこと。
見捨てられ不安は消すべきものではなく、向き合い方を工夫することでむしろ自分を成長させるきっかけになるのです。
まとめ
見捨てられ不安は「プラスのストロークに依存している」ことから生じます。
相手からの承認や愛情が途絶えたり一貫性を失ったりすると、大きな不安に飲み込まれてしまいますが、安心の供給源を自分の中に育て、相手の行動と自分の価値を切り離し、不安そのものを受け入れることで、見捨てられ不安と健全に付き合っていくことができます。
僕自身、このプロセスを繰り返す中で少しずつ不安に強くなり、人との関係をより落ち着いて楽しめるようになってきました。
見捨てられ不安は誰にでも起こり得るものです。
その存在を否定するのではなく、理解し、付き合い方を工夫することが、心の安定につながるのだと思います。
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