
僕は長い間、誰かに褒められても素直に受け取れない自分に悩んでいました。
「ありがとう」と言われても、どこか不自然な気持ちになる。
嬉しいはずなのに、胸の奥に引っかかる違和感がある。
もしかすると、あなたも同じような感覚を抱えているかもしれません。
実は、この感覚は単なる性格の問題ではなく、僕たちが生きてきた環境や経験、特に「否定的な環境」で育ったことと深く関係しています。
この記事では、アダルトチルドレンの視点から、なぜ褒められても素直に受け取れないのか、そしてその不快感を少しずつ和らげるための考え方を具体例を交えて解説していきます。
褒め言葉が不快になる心理的理由
多くの人は、褒められると嬉しいと感じますが、アダルトチルドレンの多くは、褒められると逆に違和感や不快感を覚えます。
その理由は、過去の経験から形成された自己認識にあります。
子どものころ、家庭や周囲の大人から「もっと頑張れ」「それじゃダメだ」と否定的な言葉を繰り返し受けて育った場合、自分に対する評価の基準が「ダメな自分」と固定されます。
すると、褒められることは一見ポジティブな出来事でありながら、心の奥では「いや、そんなはずはない」という自己認識との葛藤を生むのです。
例えば、仕事で上司から「今回のプレゼン、とても良かったね」と褒められたとします。
普通であれば喜ぶ場面ですが、否定的な育ちを経験している場合、次のような思考が生まれます。
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「自分は普段ダメだから、こんなに褒められるわけがない」
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「誰かが見ていないと、この成果は評価されない」
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「きっと後で何か悪いことを指摘されるに違いない」
このように、褒め言葉が表面的にはポジティブでも、内側では自己否定の強化として感じられてしまうのです。
褒められ不快感の逆説的構造
褒められることに不快感を覚える心理は、逆説的な自己認識の現れとも言えます。
褒められることで、「自分は本来ダメだ」という認識が逆に浮き彫りになるのです。
僕の友人Aさんは、子どもの頃から「努力が足りない」と常に親から責められていました。
そのため、Aさんは自分を「できない人間」と認識しています。
大人になっても、仕事で成果を出すと「すごいね」と褒められる場面がありますが、Aさんの内心はこうです。
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「褒められても、きっとたまたまだ」
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「自分は本当はダメなんだ」
褒め言葉が、本人の深層心理で自己否定を呼び起こしてしまうのです。
これが、褒められて不快になる心理の逆説的構造です。
自己認識と褒め言葉のギャップ
褒め言葉に違和感を覚える根本的な理由は、自己認識と外からの評価とのギャップにあります。
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自己認識:「自分は褒められる価値がない」
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外からの評価:「あなたは素晴らしい」
このギャップが心に違和感を生じさせ、褒められること自体が不快感につながります。
アダルトチルドレンの多くは、このギャップを無意識のうちに「自分はダメだ」という確認作業として受け取ってしまうのです。
褒め言葉を素直に受け取るための考え方
では、褒め言葉を不快に感じてしまう自分とどう向き合えばよいのでしょうか。
ここでは、いくつかの具体的な考え方やステップをご紹介します。
1. 褒め言葉を「事実」ではなく「視点」として受け取る
褒め言葉を「事実」として受け入れようとすると、自己認識とのズレが生じます。
まずは「外からの肯定的な視点」として受け取り、事実かどうかは脇に置きます。
例:「上司は自分のプレゼンを褒めた」=事実
「自分は褒められる価値がある」=判断せず、とりあえずそのまま受け取る
この距離感を意識するだけで、褒め言葉への違和感は少し和らぎます。
2. 自己認識を柔らかくする
「自分はダメだ」という強固な自己認識を、少しずつ柔らかくすることも大切です。
完璧に書き換える必要はなく、「自分も褒められる部分があっていい」と自分に許可を出すだけで十分です。
例:
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今日の仕事で、うまくいった部分を1つだけ見つけて自分に声をかける
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成功体験を日記に書き、自己評価の材料にする
3. 小さな褒め言葉から練習する
最初から大きな褒め言葉を素直に受け取ろうとすると、違和感が強く出ます。
まずは小さな褒め言葉や自分でも認めやすい事柄から練習するのがおすすめです。
例:
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「今日の服、似合ってるね」
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「そのアイデア、いいね」
こうした軽い褒め言葉を受け入れる練習を積み重ねることで、少しずつ自己認識とのギャップに耐えられるようになります。
4. 感謝の気持ちに置き換える
褒められたときに「ありがとう」と言えるように意識するのも効果的です。
感謝は自己評価の正否を問わず、相手の気持ちを受け取る行為。
褒め言葉を自己評価と結びつけず、感謝として受け取ることで、不快感を軽減できます。
褒められ不快感の改善には時間が必要
褒め言葉に対する違和感は、過去の経験に根ざした深い心理構造です。
そのため、改善には時間と段階的な練習が必要になります。
焦らず、少しずつ「褒められる自分も存在していい」と自分に許可を出すことが重要です。
アダルトチルドレンとして育った僕自身も、褒め言葉を素直に受け取れるようになるまでには長い時間がかかりました。
しかし、意識的に練習し、自分の内側の違和感を観察することで、少しずつ受け取りやすくなったのです。
まとめ
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褒められても素直に受け取れないのは、否定的な人生経験によって「自分はダメ」という自己認識が形成されているためです。
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褒め言葉は逆説的に自己否定を強化することがあり、不快感を生むことがあります。
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重要なのは、褒め言葉を「事実」としてではなく「外からの肯定的視点」として受け取ること。
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自己認識を少しずつ柔らかくし、小さな褒め言葉から練習し、感謝の気持ちとして受け取ることで、不快感は和らぎます。
褒め言葉を素直に受け取れるようになることは、自己肯定感を育てる大切な第一歩です。
否定的な環境で育った僕たちにとって、これは小さな変化かもしれません。
しかし、その積み重ねが「自分を認める力」を育て、人生の質を少しずつ変えてくれます。
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