僕たちは、自分らしく生きることを自分に禁じています。
あるべき姿に囚われ「偽りの自分を演じること」が最良とされている世界で生きるということは、身動きのとれない窮屈な生き方なのです。
さて、「自分らしく生きることを禁じている」とはどういうことでしょうか。
それは言い換えると、自分の感情を否定しているということです。
湧き上がってくる自然発生的な感情を、僕たちは無意識のうちに抑え込み、社会に馴染もうとし、欲しいものを得ようとしています。
ということで今回の記事では、「感情」に焦点を当てて、自分らしく生きることの本質について考えてみたいと思います。
感情の居場所はあるか
あなたが「自分らしく生きられていない」と感じるとき、まずは自分の感情に“居場所”があるかどうかを見つめてみることが大切です。
私たちは幼い頃から、感情を「正しいかどうか」で判断するように育ってきました。
「そんなことで泣くな」
「怒るのはよくないことだ」
「わがまま言っちゃだめ」
こうした言葉の裏には、「感情をそのまま表現するのは間違っている」というメッセージが含まれています。
その結果、私たちは感情を感じるたびに「これは正しいのか?」「こんなふうに感じていいのか?」と自分を問い詰める癖がついてしまうのです。
感情を否定することは、自分の一部を否定すること
たとえば、怒りを感じたとします。
理不尽なことをされた、無視された、尊重されなかった。
でも、「ここで怒ったら迷惑だろう」「器が小さいと思われたくない」と自分に言い聞かせ、その感情をなかったことにする。
または、誰かに嫉妬したとき。
「嫉妬なんて醜い」「そんなこと感じる自分は嫌だ」と、感情の存在そのものを否定する。
しかし、感情というのは「自分の一部」です。切り離せるものではなく、自分の存在を形づくる大切な構成要素です。
僕たち人間は、「感情」「思考」「肉体」、そしてそれらを見つめる「意識」から成り立っています。
どれか一つでも否定すれば、自分の輪郭はぼやけ、自分らしさは失われてしまう。
だからこそ、感情を否定することは、自分自身を否定することにつながるのです。
そうして自分の感情を否定し続けると、次第に「何を感じているのか」「何が好きなのか」「何に違和感を覚えているのか」がわからなくなっていきます。
感情を受け入れることは、自分との信頼を築くこと
では、どうすれば感情を否定せず、自分らしく生きることができるのでしょうか。
その第一歩は、「感情をそのまま感じることを自分に許す」ことです。
「悲しい」「悔しい」「不安」「寂しい」
どんな感情であれ、それが自分の中から湧いてきたのなら、それには理由があります。
それを「良いか悪いか」でジャッジするのではなく、「ああ、今自分はこう感じているんだな」と、ただそのまま認めてあげること。
たとえその感情が幼稚に見えても、矛盾していても構いません。
感情は理屈ではなく、正直な“反応”であり、そこに価値があります。
そして、こうして感情に耳を傾け、自分自身に「否定しないまなざし」を向けることができたとき、私たちは自分とのあいだに少しずつ信頼関係を築くことができるのです。
自分らしさは「感情の奥」にある
自分らしく生きるとは、「感情のままに生きる」ことではありません。
感情を無条件に正当化して、思いのままに振る舞えばいいというわけではないのです。
でも、自分らしく生きるためには、感情を「感じないようにする」ことでもありません。
大切なのは、自分の感情を丁寧に受け止め、その奥にある「本当はどうしたいのか」「何が大切なのか」といった、価値観や願いに気づくこと。
たとえば「怒り」の奥には、「大切にされたい」「ちゃんと話を聞いてほしい」といった切実な思いがあるかもしれない。
「不安」の奥には、「失敗したくない」「信頼されたい」という願いがあるかもしれない。
その“奥にある声”に耳を澄ませること。
そこからしか「自分らしさ」は始まらないのです。
感情を否定しない生き方は、少しずつ取り戻せる
これまで感情を否定して生きてきた人が、いきなりすべてを感じ切ることは難しいかもしれません。
だからこそ、まずは小さな一歩から始めてみましょう。
・「今、自分は何を感じている?」と問いかけてみる
・日記に素直な気持ちを書いてみる
・「この感情は間違っていない」と言ってあげる
そんなことからでいいのです。
自分の感情を否定せずにいることは、自分の命に「YES」と言うことです。
そしてその肯定の積み重ねが、他人の目や社会の価値観に惑わされない、自分らしい人生へとつながっていきます。
まとめ
自分らしく生きるには、自分の感情に正直であること。
そして、その感情を否定せず、受け入れていくことが何よりの土台になります。
感情も、思考も、身体も、意識も、すべてが自分の一部。
そのすべてを丁寧に扱うことで、はじめて“自分らしく”生きる感覚が生まれてくるのです。
感情に振り回されるのではなく、感情から目を背けるのでもなく、感情とともに生きる。
それは、自分という人間の内側にある「本当の声」と出会い直す、誠実な生き方です。
自分を生きるとは、自分のすべてを抱きしめていくこと。
そんな生き方を、今日から少しずつ取り戻していきましょう。